2011年9月17日土曜日

旅支度35


ベネディクトゥスが活躍した約一世紀前、西ローマ帝国は滅びました。ローマ帝国は東西に分裂しそれぞれの道を歩むことになりましたが、西ローマ帝国はゲルマン民族の侵入などが原因で国の体裁を保てなくなります。ローマ帝国=キリスト教社会であった領土への異教の民族侵入は異文化の流入でもありました。ローマ帝国という後ろ盾の無くなったキリスト教はゲルマン民族であるフランク族を後ろ盾に選びます。フランク族もキリスト教へ改宗することで旧ローマ帝国領土内での権力固めを図ります。初期キリスト教時代、キリスト教徒は歴代の皇帝から迫害され苦難の時代を送りますが、迫害されればされるほど彼らの結束は固められ、次第にローマ人の中にも信者を増やしていきました。そしてコンスタンティヌス大帝によるキリスト教公認、その後の国教へとキリスト教が帝国内に浸透していきます。しかしそれはキリスト教の世俗化も意味しました。キリスト自身、世俗権力を認めていたので、その権力との共存、関わりの中でキリスト教も存在します。あくまで世俗権力はキリスト教に従属するものと考えられていましたが・・・。しかし両者の力関係はそのバランスを崩した時、容赦ない敵対関係を生みました。聖と俗という性質の違う権力が互いの存在を受け入れなくなり権力の潰し合いが始まります。その萌芽はキリスト教が世俗権力と関わった時に始まったと思います。族長がキリスト教に改宗すると部族全員がキリスト教徒になる社会は、迫害の中でキリストへ忠誠を誓い続けた社会とは明らかに違います。
フランク族と云う新しい保護者が現れ、旧西ローマ帝国=キリスト社会の再興がなった時、ひとときの平和が訪れます。しかし、更なる異民族の侵入、フランク王国の分割などが再び欧州を混沌とした時代に後戻りさせます。そのような混沌の時代に生きたのがキリストの教えを求めたヴェネディクトゥスであり、聖なる空間を求めた多くの修道士たちです。続く

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