2011年9月13日火曜日

旅支度33


六世紀、西欧で最初の組織的な修道院が現われました。五二九年に創建されたイタリアのモンテ・カッシーノの修道院です。ヌルシアのベネディクトゥスが始めた修道士たちの修道場所です。彼自身は古代ローマ貴族の家系に生まれましたがキリストと共に生きる生活を選びます。彼以前にも隠修修道士として個人で修道生活する人たちもいましたが、ベネディクトゥスが初めて修道士の共同生活する共住修道院を設立します。戒律を定め「祈り、かつ働け」がベネディクト会の修道生活の基本となります。神から与えられた罰であった「労働」が修道院では重要な修道生活の一部を成しました。修道士にとって人類の背負わされた「労働」は、原罪を一身に背負って磔になったキリストと共に在る事を喜ぶ術だったのかもしれません。修道士には清貧、貞節、従順の規律のもとに終生キリストへの信仰に生きる事も求められました。しかし、修道院の「労働」がキリストへの信仰に基づき行われ、修道生活を補完する自給自足の範囲で収まっている間は問題はありませんでしたが、次第に世俗社会との関わりが生ずるとその特質が変容していきました。  
古代から忌み嫌われていた「労働」は、労働する人の受け取り方次第では辛いものであり感謝へ通ずる行為にもなります。キリストと共にある喜びを共有している修道士たちにとって「労働」は喜びだったと思います。
その後、修道院内で行われた「労働」の成果は世俗に拡がり彼らの生活にも影響を与えます。何故なら中世、修道院(教会)は生活の情報・技術の発信源となっていたからです。続く

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